「共謀罪」法成立 廃止あきらめない 採決強行、来月施行へ(東京新聞)
犯罪の合意を処罰する「共謀罪」の趣旨を含む改正組織犯罪処罰法は十五日朝の参院本会議で、自民、公明の与党と日本維新の会などの賛成多数で可決、成立した。参院法務委員会での採決を省略し、本会議で「中間報告」を行う異例の手法で、十四日から徹夜の攻防が続いた後、与党が野党を押し切った。施行日は七月十一日の見通し。
(※後略)
この “平成の治安維持法” 共謀罪について、産経新聞は例によって
ある警察庁幹部は「この法案反対の騒動は何のためのものか。令状主義に立つ警察捜査の現状、組織実態から見て、住民運動の監視にこの法律を利用するなどあり得ない。むしろ、これまで以上に慎重になるだろう」と寝言をほざいているが、下記の元高裁判事の発言を読めば、これが真っ赤な嘘であることがわかるだろう。
共謀罪で司法は歯止めにならない 元高裁判事が語る(AERA dot.)
(※前略)
●事なかれ主義の裁判官
これが最大の「まやかし」です。逮捕状、捜索差し押さえ令状は、捜査官が提出する一方的な資料に基づいて、発布の適否を判断します。しかし、捜査官から提出された資料が真実かどうかを裁判官が判断するすべはない。「資料が足りない」と指摘すると補充してきますが、それで疎明(裁判官が事件の存否について、一応確からしいという心証を得た状態)できれば、裁判官は令状を発付せざるを得ません。この段階で歯止めをかけるのは非常に難しい。
これは、裁判官の心理を考えるとより理解できます。捜査官は重大な犯罪が実行されそうだという資料を持ってくる。それに対して、その情報を虚偽と疑うべき証拠はない。裁判官が「逮捕、勾留や捜索、差し押さえまでする必要があるのか」と思ったとしても、もしその計画が実行されて重大犯罪が起きたらどうなるかとも当然考えます。裁判官も1人の人間として「事件が起こって社会からバッシングを受けるくらいなら、捜査機関の意向に従って令状を出しておこう」という判断になりやすいのです。
(※中略)
簡単に令状を出してくれる裁判官が当番の日まで待ってから申請するのです。捜索差し押さえ令状などについては、そういう措置も優に可能です。私が勤務したある地裁では、そういうことが日常茶飯事的に行われていました。
沖縄の東村高江周辺のヘリパッド建設に反対する住民たちへの逮捕に対して、司法は歯止めになりましたか。各地で起こっている反原発訴訟に対してどういう判決が下されていますか。それを考えれば、明白です。裁判所は、権力に「なびきやすい」と知るべきです。誠に残念なことですが、間違っても「裁判所があるから大丈夫」などと、安心してはいけません。
なお、時事通信の記事よれば
警視庁のある捜査幹部は成立を歓迎する一方、「新たな捜査手法が認められたわけではなく、実際の適用は結構難しいと思う」と冷静に受け止めた。「組織的犯罪集団」の立証が課題だとし、「通信傍受の拡大も当然議論になる。最初は分かりやすい暴力団などに適用するのではないか」との見通しを示した。とあり、最初だけは暴力団対策などに使って世論の喝采を得て、それをもって、既に存在する “自由盗聴法” こと通信傍受法をさらに強化しよう、という思惑が透けて見える。
捜査機関による恣意(しい)的な運用も懸念されているが、別の捜査幹部は「(市民活動への)萎縮効果はあるかもしれない」と否定せず、「成立の段階でこれだけ批判や心配の声があり、慎重に使わざるを得ない」と話した。
その結果、“お上に従わぬ者の口が封じられる” 検閲国家になることは、