自民党の新憲法起草委員会(委員長・森前首相)が新憲法草案の条文案を公開したことで、“改正著作権法のように”完全な裏番組になってしまったが、8月1日、民主党は、人権擁護法案の対案である「人権侵害救済法案」を衆院に提出した。以下、NIKKEI NETより該当記事を引用。
弁護士の小倉秀夫氏は「日本には、人種差別を非合法化する特定の法律が無いので、人種差別等を禁止するために積極的な立法を行うことは避けられない」というような見解を述べている(※「追記」部分に、小倉秀夫の「IT法のTop Front」:人権擁護法案の全文を引用)。それが本当であれば、人種差別を非合法化する法律は、是非とも制定すべきだ。しかし何故、自民・民主両党とも、人権侵害の定義が曖昧で、恣意的に運用すれば、言論統制・思想弾圧も思いのままの法案を作るのだろう(※参考として、「追記」部分に、7月25日付・読売社説(1)[人権擁護法案]「やはり一から作り直すべきだ」の全文を引用)。それを公明党が推進しているのを見ると、公明党の支持母体である某宗教法人が何らかの批判に晒された場合、それを「差別だ!」と弾圧することが、彼の党の狙いなのではないか、と、薄汚い勘繰りをしたくもなる。
最後に、人権擁護法案を危惧する国民協議会 人権擁護法案を考える市民の会:民主党資料2 法案の解説より、民主党が提出した「人権侵害救済法案」に対する「いくつかの注目点」注目点を引用して、このエントリーを終わりにする。
民主、人権擁護法案の対案を衆院に提出この民主党案、天誅さんやカレーとご飯の神隠しさんは、自民党案(自民党執行部は、今国会での提出を断念)よりも危険だと論じている。特に、カレーとご飯の神隠しさんは、
民主党は1日、政府・与党が今国会への提出を断念した人権擁護法案の対案となる人権侵害救済法案を議員立法で衆院に提出した。(1)人権を侵害された人を救済する「中央人権委員会」を内閣府の外局に、「地方人権委員会」を各都道府県に置く(2)メディア規制条項は設けず、報道機関の自主的な解決への取り組み努力を求める――が柱。 (20:02)
自民案には「陰謀論」と言えるけど、民主案だと事実としか言えないようなヤバさとまで言い切っている。詳しくは、リンク先の、カレーとご飯の神隠しさんのエントリーをご覧頂きたい。
弁護士の小倉秀夫氏は「日本には、人種差別を非合法化する特定の法律が無いので、人種差別等を禁止するために積極的な立法を行うことは避けられない」というような見解を述べている(※「追記」部分に、小倉秀夫の「IT法のTop Front」:人権擁護法案の全文を引用)。それが本当であれば、人種差別を非合法化する法律は、是非とも制定すべきだ。しかし何故、自民・民主両党とも、人権侵害の定義が曖昧で、恣意的に運用すれば、言論統制・思想弾圧も思いのままの法案を作るのだろう(※参考として、「追記」部分に、7月25日付・読売社説(1)[人権擁護法案]「やはり一から作り直すべきだ」の全文を引用)。それを公明党が推進しているのを見ると、公明党の支持母体である某宗教法人が何らかの批判に晒された場合、それを「差別だ!」と弾圧することが、彼の党の狙いなのではないか、と、薄汚い勘繰りをしたくもなる。
最後に、人権擁護法案を危惧する国民協議会 人権擁護法案を考える市民の会:民主党資料2 法案の解説より、民主党が提出した「人権侵害救済法案」に対する「いくつかの注目点」注目点を引用して、このエントリーを終わりにする。
(前略)
いくつかの注目点
政府(法務省)案で問題を指摘された箇所がほぼそのまま残存。
当然、人権侵害の定義は曖昧のまま。
内閣府に設置することで、男女共同参画室同様の強権機関化を企図。
報道機関に自主取組規定をおき、特別救済の対象外とした。しかし個人のジャーナリストは対象となりうる。
① 中央(六人)と地方(四人)に有給の人権委員会及びその事務局を置く。
② 中央人権委員会は内閣府の外局に置く。
③ 中央、地方の人権委員会とも、委員に人権擁護を目的とし若しくはこれを支持する団体の構成員又は人権侵害の被害者を含むよう努力義務がある
④ “ジェンダーバランス”観念が浸透し、人権委員の男女がおのおの半数未満となることを禁止。
⑤ 地方人権委員は人権擁護委員(全国で一万人、有給)を委嘱する
⑥ 人権擁護委員に国籍要件なし
⑦ 人権擁護委員の選任母体に、弁護士会その他人権の擁護を目的とし又はこれを支持する団体の構成員、が明記されている。
⑧ 特別救済の調査等は中央・地方の事務局員が実行できる。
今日のBGM♪ David Holmes Gone (First Night Without Charge)
以下、小倉秀夫の「IT法のTop Front」:人権擁護法案より引用。
人権擁護法案
前回のエントリーでは「現在の日本では、個々人ではなく、ある人種なり、民族なりを侮蔑したりする表現は、法的には禁止されていません。」と述べました。ただし、そういった状況はそう長くは続かないかもしれません。
日本は、人種差別撤廃条約に参加した関係で、人種差別撤廃委員会(CERD)に条約の実施状況を報告しなければならなくなり、実際報告をしました。これを受けてCERDはこの報告書を審査し、2001年3月に「日本政府報告書への最終見解」を発表しました。この中でCERDは、「特に本条約第4条及び第5条に適合するような、人種差別を非合法化する特定の法律を制定することが必要であると信じる。」「人種的優越や憎悪に基づくあらゆる思想の流布を禁止することは、意見や表現の自由の権利と整合するものである。」「人種差別の禁止全般について、委員会は、人種差別それのみでは刑法上明示的かつ十分に処罰されないことを更に懸念する。委員会は、締約国に対し、人種差別の処罰化と、権限のある国の裁判所及び他の国家機関による、人種差別的行為からの効果的な保護と救済へのアクセスを確保すべく、本条約の規定を国内法秩序において完全に実施することを考慮するよう勧告する。」との見解を述べています。つまり、我が国においても、人種差別等を禁止するために積極的な立法を行うことは避けられない状況にあるわけです。
そのような観点から見ると、近時話題となっている「人権擁護法案」の意義及び問題点がわかります。
この法案では、「特定の者に対し、その者の有する人種等の属性を理由としてする侮辱、嫌がらせその他の不当な差別的言動」(第3条第1項第2号イ)等を人権侵害行為として禁止することとしています。その上で、そのような「不当な差別的言動であって、相手方を畏怖させ、困惑させ、又は著しく不快にさせるもの」に対しては、第3節第2款ないし第4款所定の「必要な措置を講ずることができる」(第42条第1項第2号イ)とされ、その「必要な措置」の中には、人権委員会が、「特別人権侵害が現に行われ、又は行われたと認める場合において、当該特別人権侵害による被害の救済又は予防を図るため必要があると認めるときは、当該行為をした者に対し、理由を付して、当該行為をやめるべきこと又は当該行為若しくはこれと同様の行為を将来行わないことその他被害の救済又は予防に必要な措置を執るべきことを勧告すること」(第60条第1項)や「当該勧告を受けた者がこれに従わないときは、その旨及び当該勧告の内容を公表すること」(第60条第2項)ができるとされています。また、「特定の者に対し、その者の有する人種等の属性を理由としてする侮辱、嫌がらせその他の不当な差別的言動」であって「これを放置すれば当該不当な差別的取扱いをすることを助長し、又は誘発するおそれがあることが明らかであるもの」(第43条第1号)についても同様の措置を講ずることができます。
人権擁護法案は、人種差別規制の他に、メディアスクラムやメディアストーキング等の規制も一つの法律でやろうとしているものなので、特に後者の点に関して、マスメディアから強い反発を受けています。そちらの方は別の機会に触れるとして、人種差別規制の方に焦点を絞りましょう。
「2ちゃんねる」投稿者や匿名ブロガーの一部の反発にもかかわらず、国際人権規約や人種差別撤廃条約の実施という観点から見ると、人権擁護法案が定める人種差別規制は範囲が狭い上に強制力も弱いということがいえます。「人種的優越又は憎悪に基づく思想の……流布」については特段の措置を講じていません(人権擁護法案が規制しようとしたのは、「特定の者」に向けられたもの及び人種等の共通の属性を有する「不特定の者」に対する具体的な差別的取り扱い、上記共通属性の公然適示行為であって、人種等の共通の属性を有する「不特定の者」に対する「侮辱、嫌がらせその他の不当な差別的言動」は規制の対象となっていない)し、人権委員会による調査活動に協力しなかった者に対し科料の制裁を科すのみで、人種差別等の実行者・扇動者を処罰する旨の規定を置いていません。
もちろん、人権委員会には「当該勧告を受けた者がこれに従わないときは、その旨及び当該勧告の内容を公表する」権限が与えられるわけで、匿名の陰に隠れて安易な気分で差別的言動を行っている方には、そのことが世間に明るみに出るということは刑罰を受けるに等しい精神的苦痛となる場合もあり得ることは想像しうる範囲内にあるにせよ、それはある意味非常に日本的な感覚なので、人種差別的な言動を行ってもその程度の制裁しか受けないというのでは、国際社会は満足しないのではないかという危惧はあります。その意味では、今回の人権擁護法案は、人種差別撤廃のための第1歩ではあるが、十分なものではないということができそうに思います。
現行憲法の解釈においても、たとえば善良な性道徳を守るために行う表現規制は刑罰を伴うものであれ合憲とされているのですから、これとバランスを失しない範囲で、人種差別等を撤廃するために刑罰を伴う表現規制を行うことも憲法上は許されると思われます。「人種差別」等の定義が不明確であるという批判に対しては、人種差別撤廃条約の定義規定を参考に定義の明確化を図ることでこれに応えた上で、「グローバル・スタンダード」に合致した、より実効的な人種差別規制を設けることが望まれるのではないかと思います。
以下、読売新聞の7月25日付けの社説より引用。
7月25日付・読売社説(1)
[人権擁護法案]「やはり一から作り直すべきだ」
会期末まで残り少ない今国会に、これほど問題点の多い法案を無理に提出する意味は、もうないだろう。
人権擁護法案については、自民党内でもまだ、意見集約ができていない。郵政民営化関連法案が順調に成立した場合、速やかに党内で法案了承手続きを進め、国会提出を目指す動きもあるが、取りやめるべきである。
党内の反対派議員でつくる「真の人権擁護を考える懇談会」は、これまで法案の様々な問題点を指摘し、法務省などに条文の修正を迫ってきた。
法案の問題点の一つは、人権侵害の定義があいまいなことである。
「不当な差別、虐待その他の人権を侵害する行為」とされている。だが、この規定では、例えば拉致事件に関し、在日本朝鮮人総連合会の活動を批判する政治家の発言なども、「差別的言動」として「その他の人権侵害行為」に該当する、とされかねない。
現に発生した人権侵害による被害だけでなく、これから発生する「おそれのある」ものまでが対象とされている。自由な言論・表現活動を委縮させる結果につながる恐れが大きい。
二つ目は、法務省の外局に置かれる人権委員会の権限が強大すぎることだ。
「特別救済手続」と称して、裁判所の令状なしに、関係者に出頭を求め、質問することができる。関係書類を提出させたり、関係場所に立ち入ったりすることも可能だ。
正当な理由なく拒めば、過料が科される。これも運用次第では、言論・表現活動の場に、「弾圧」にも等しい権力機関の介入を招き、調査される側の人権が不当に侵される恐れがある。
三つ目は、地域社会の人権問題に携わる人権擁護委員の選任資格の問題だ。法案には、現行の人権擁護委員法にある国籍条項がなく、外国人も委員になることができる。
懸念されるのは、朝鮮総連など特定の団体の関係者が人権擁護委員になり、自分たちに批判的な政治家や報道内容について調査し、人権委員会に“告発”するようなケースだ。
懇談会は、人権侵害の定義の明確化、人権委員会の権限抑制、国籍条項の導入などを求めた。法務省は一部を除き、根本的修正にはほとんど応じなかった。
真に、かつ迅速に救済が図られるべき人権を守り、一方で、新たな人権侵害を生む余地のない法案を目指すべきだ。
そのためには、一から作り直すしかないだろう。拙速な国会提出に、これ以上こだわるべきではない。
(2005年7月25日1時40分 読売新聞)
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