以下、asahi.comより引用。
はじめに断わっておくが、僕は死刑廃止論者ではない。本村洋氏の 「もし犯人が死刑にならずに刑務所から出てくれば、私が自分の手で殺す」 という復讐論はもっとであると思うし、今回の事件の被害者である、堀本紗也乃さん(当時12歳)の父恒秀さんの気持ちは、察するに余りある。しかしである。何故マスコミ各社は、彼らの復讐心を “ 正義 ” とし、犯人を殺したいがための彼らの活動を、あたかも美談であるかのように報道するのであろうか。
もう1つ、ここで断わっておくが 「 厳罰化は犯罪を抑止する 」 という考えは都市伝説であり迷信である。厳罰化が犯罪発生率を抑制した、という事実があるだろうか? 少年犯罪においては、むしろ厳罰化は逆効果という研究結果があるほどだ。厳罰化が犯罪を抑える、という客観的証拠が無い以上、厳罰化の支持根拠とされているのは 「非常に感覚的、感情的な思い入れ 」 と言う他ない。
冷静に考えてほしい。そもそも 「 厳罰化されたから犯罪はやめよう 」 と考えられるような人間が、罪を犯すだろうか? 犯罪を犯すような者なら 「 厳罰化されたから、バレないように注意しなきゃ 」 と考えるのが自然だろう。「 厳罰化されたから、もう俺の人生もお終いだ。これなら、1人殺しても2人殺しても同じだ! 」 と、むしろ厳罰化が犯罪の凶悪化を招く可能性の方が、犯罪抑止効果よりもずっと高いように思われる。
ついでにもう1つ断わっておくが、厳罰化の根拠に 「 割れ窓理論 」 を挙げる人がいるかも知れない。しかし、ルドルフ・ジュリアーニ氏がニューヨーク市長時代に行ったことは、警察官の大量増員による 「 取締りの強化 」 であって 「 罰則の強化 」 ではないことは明らかである。
マスコミ各社、特にテレビによるお涙ちょうだい的な 「 犯人を死刑にしたくて奮闘する犯罪被害者 」 の報道が、日本社会に貢献する事は全く無いのである。どんなに美談めかして “ 社会的正義 ” を気取ったところで、そんな正義はどこにもない。あるのは 『 「 復讐したい、犯人を殺してやりたい 」 という犯罪被害者・遺族の思いをネタに、一種の “ 美談 ” をでっちあげ、日本全体に 「 殺せ!殺せ! 」の大合唱を発生させて、それを飯のタネとしている 』 というグロテスクさだけだ。
さらに困った事は、マスコミ各社の報道に洗脳されて 「 犯罪者を殺す事が正義だ!死刑に反対する者は人間じゃない! 」 と本気で思ってしまっている日本人が、一人や二人ではないことである。特徴的なのが、山口県光市の母子殺人事件のケースだ。見よ、グーグルの 「 本村洋 」 検索結果を。この絶賛の数々を。ハッキリと「本村洋さんは現代のヒーロー」 と言い切っているサイトすらある。
もう一度繰り返す。「 復讐心 」 はいい。しかし、自らの 「 犯人を殺したい 」 という個人的な怨恨を、あたかも社会正義のように偽装しするとはどういう了見なのか。本村洋個人の復讐心を満たすことが、日本社会にとってプラスとなると、彼は心の底から思っているのだろうか。本村洋氏は 「 死刑制度は武士道に通じた崇高な考え方で、日本の文化に合致している 」 という主旨の、自分勝手な論理を展開した事もあるそうだから、ありえない話でもないだろう。これは小泉純一郎氏にも通じる、危険なナルシズムである。
そして、それを美談めかして垂れ流すマスコミと、真に受け洗脳されてしまっている国民の存在も大問題だ。日本はいつから 「 恨(ハン)の文化 」 の国になってしまったのだ!? これが “ 韓流ブーム ” というものなのだろうか。
また、本村洋氏や、今回の事件の遺族である堀本恒秀さんの姿勢を支持し 「 容疑者は死刑になって当然 」 と考えている人たちは、インチキな理由で始まったイラク戦争において一貫してアメリカを支持し、あまつさえ、アメリカ軍に対する支援を2年延長しようとまでしている日本の国民に対する、イラクの民による “ 復讐 ” 自爆テロも、認めるつもりなのだろうか。まさか 「 自分たちが復讐するのはOKだが、復讐されるのはNG 」 という、卑怯者丸出しの態度はとらない信じたいが、いずれにしても、復讐とは、必然的に暴力の連鎖をもたらすものであり、日々の安寧な生活を脅かすものなのである。故に、復讐心は煽るべきものではなく、コントロールしようとすべきものなのだ。
しかしなぜ、こういった野蛮でグロテスクな報道が、不自然に繰り返されるのだろう。郵政 “ 米営化 ” の隠蔽は言うに及ばず、ついこの間も、ゴールドマン・サックスが不二家株を空売りするのとタイミングを合わせて、12年前の食中毒事件を掘り起こしてまで不二家を叩いたマスコミ連中のことだ。今回の 「 殺せ!殺せ! 」 報道によっても、利益を得る者が居るのではないか、という僕の推測は、そう突飛な物でもないだろう。
「 容疑者を殺せ! 」 という報道で利益を得る者として先ず思い当たるのが、警察である。強姦容疑で服役を終えた富山県の男性の一件で火がついた感のある冤罪追求報道は、例によってすぐに下火になったものの、鹿児島県議選における公職選挙法違反の罪に問われた12人の無罪が確定するなど、冤罪は、思った以上に多く発生している。警察・検察と言えども人間なので、間違いが発生するのはむしろ自然なことであり、ある程度は仕方がないことだと思うが、日本の刑事裁判おける有罪率99.9%の数字は明らかに異常だ。宗男ハウス事件や “ 手鏡 ” 植草一秀教授の事件のような国策捜査についてはここでは触れないが、「 起訴されたらほぼ確実に有罪 」 という現状は、刑事裁判が “ はじめに有罪ありき ” で、真実を明らかにする、という機能を果たしていないとしか考えられない。
因みに、日本の “ 宗主国 ” アメリカではもっと恐るべきことになっているようだ。なんと、死刑囚ら188人が、DNA鑑定で続々、無実を証明されたそうである。リンク先の記事によると
DNA鑑定その他で無罪が判明すれば良いが、その前に死刑が執行されてしまえば “ 死人に口なし ” である。死刑執行後、無罪が判明した例も無いわけではないが、容疑者本人が死んでしまえば、冤罪が証明されるのはかなり難しくなるし、モチベーションも低下するだろう。死刑の執行が増えれば増えるほど、冤罪が証明される可能性も低くなるのは想像に難くない。やってもない罪まで一緒に押し付けられる、部分冤罪も増えるだろう。しかし、それによって統計上の検挙率は上がり、警察・検察も面子が立つ、というわけだ。
日本の刑事裁判についてだが、現在、国民の大半が嫌がっているにも関わらず、一般国民を無理やり 「 裁判員 」 として凶悪犯罪の刑事裁判に参加させる 「 裁判員制度 」 なる制度の準備が、2009年(平成21年)5月の開始に向け、着々と進んでいる。裁判員制度については、以前 「 〔裁判員制度〕は冤罪量産装置? 」 に取り上げたのでここでは詳しく書かないが、マスコミが今のような 「 殺せ!殺せ! 」 報道を続けるなら、死刑を下さざるを得ない “ 空気 ” が形成される事は明らかだ。
恐らく、マスコミが作り上げたシナリオに反して死刑にならなかった場合、マスコミに洗脳された 「 犯罪者を殺す事が正義だ!死刑に反対する者は人間じゃない! 」 と本気で思ってしまっている人々から、裁判に対する多数の非難が寄せられるだろう。加藤紘一氏の実家への放火事件という言論封殺行為がさして大きな問題とはならず、むしろ賞賛すらされている物騒なご時世だ。たまたま抽選で選ばれてしまった裁判員に対するテロが起こっても不思議ではない。まあ、住基ネットに違憲判断を下した三日後に “ 自殺 ” した、竹中省吾裁判官の一件のようなことは、そうそうは起こらないだろうが…。
因みに今、国会では<共謀罪>という恐ろしい法律の審議も進んでいる。当初より対象が狭まったとは言え、密告1つで罪をでっち上げられるという最悪のポイントはそのままであり、選挙後の国会における動向には注意せざるを得ない。万が一、<共謀罪>が、公安警察OBですら “ 治安維持法みたいになる ” と太鼓判を押すような内容のまま成立したら、死刑執行による “ 死人に口なし ” という事例も増え、しかも逆に治安は悪化し、日本は暗黒社会化するだろう。
「 容疑者を殺せ! 」 という報道で利益を得る者としては、他に 「 日本の政治家・エスタブリッシュメント層 」 が考えられる。現在日本では “ 国際金融資本とその手先どもによる、国際金融資本とその手先どものための好景気 ” の陰で深刻な “ 中産階級の没落、貧困層化 ” が起こっている。( 余談になるが、格差が存在することは当たり前であり、そういう意味では “格差社会” という言葉はマヤカシのレッテルである。“ 中産階級の没落、貧困層化。そして、機会の不平等による貧困の拡大再生産 ” が実体であり、マスコミを通じた印象操作に騙されてはいけない。 )
一刻も早く解決しなければならない “ 格差 ” の1つに、医療制度の崩壊がある。当ブログでも、以前より 「 【11人死亡】健康保険証の取り上げ、30万件を超す。 」 や 「 休日・夜間の救急医療体制、崩壊へ 」 といったエントリーで警鐘を鳴らしてきたが、今日も 「 ICUの医師が集団離職・国立循環器病センター 医療批判では解決しない過酷な現実 」 という記事が報道されるなど、状況は悪化の一途をたどっているようだ。
しかし、選挙の争点化を嫌う勢力があるのか知らないが、マスコミ、特にテレビでは、医療崩壊の報道はほとんどなされない。人々の命に関わる事柄であることを考えると、これは不自然と言わざるを得ない。
冷静に考えれば、北朝鮮のことよりも、医療システムの崩壊や “ 派遣奴隷 ” をはじめとするワーキング・プア ( 勤労貧困層。フルタイムで働いても、生活保護以下の水準の収入しか得られない層 )といった “ 自分たちの足元の問題 ” の方が切実であることは容易にわかる。しかし、マスコミ各社の 「 殺せ!殺せ! 」 報道によって野蛮な感情を煽りたてられた国民大衆は、本当の問題点に気付くことは無く、偽りの “ 怒りの矛先 ” をあてがわれてギャーギャー叫んでるだけ、という分けだ。「 分割して統治せよ 」 「 (大衆を)互いに争わせることで目を塞げば良い (by アドルフ・ヒットラー) 」 とはよく言ったもので 「 ハケンの品格 」 のスポンサーや、それに出資しているような連中にとっては、笑いが止まらないだろう。
毎日新聞の調査では 「 あるある大事典2 」 の捏造発覚によりテレビへの信頼度が下がった人は、実に66%にも上るらしい。これが契機となって、テレビ報道を鵜呑みにしない人が一人でも多く増えることを僕は望んでいる。
※関連エントリー
※おまけ
父「うそつき。娘を返せ」 京都塾女児殺害判決他に読売新聞も 「 遺族「刑軽すぎる」憤り…宇治・女児殺害判決 」 という、遺族の気持ちに寄り添うかのような体裁をとった 「 殺せ!殺せ! 」 という扇情的な記事をパプリッシングしている。朝日・読売両紙とも、裁判その物を報じる記事とは別にしているという念の入れようだ。新聞記事がこの有様なのだから、総ワイドショー化の著しいテレビがどのような惨状となっているのかは、推して知るべし、である。また、畠山鈴香氏の事件やトーレス・ヤギ被告の事件、そして、本村洋をヒーローにした山口母子殺人事件の時のように、日本各地で 「 吊るせ!吊るせ! 」 の大合唱が起こってしまうのだろうか。
2007年03月06日12時59分
「量刑を聞いた瞬間、あまりにも刑が軽いと……。その一点です。検察当局には控訴していただきたい」
判決後、京都市中京区の京都弁護士会館で会見した紗也乃さんの父、堀本恒秀さん(43)は悔しさをあらわにした。萩野被告については「反省はしていないと思う。『うそつき。娘を返せ』と言いたい」と話した。
昨年2月の初公判後、恒秀さんは、「娘の姿を率直に伝えたい」と、入塾から事件当日まで約9カ月間の出来事や塾側とのやり取りをまとめた文書を報道陣に公開した。個別指導と称して萩野被告が紗也乃さんを繰り返し呼び出し、紗也乃さんがおびえていた経過が克明に記されていた。
紗也乃さんの母は公判で「平然と反省もなく紗也乃のことを悪く言い、うそをつき、罪を逃れようとしています。人間ではありません。悪魔です」と非難し、死刑を求めた。
一方、萩野被告はこの日、黒いスーツに白いシャツ姿で、着席前に傍聴席を見回した。判決文の朗読が進むうちに次第に落ち着きを失い、顔を紅潮させて周囲を何度も見渡した。
最後に裁判長から「かなり長い刑だがやむを得ない。自分の行った行為を償い、贖罪(しょくざい)の日々を送って下さい」と話しかけられると「はい」と答え、頭を下げた。
これまでの公判では、謝罪の言葉を述べる一方、「僕を殺してください」「助けてください」と大声をあげるなど、異常な言動も目立った。
弁護人によると、萩野被告は、被害者が復活して殺しに来る恐怖を訴えるという。一晩中、見張りと称して眠らなかった時期もあったといい、雑居房から独居房に移されたり、自殺を防ぐために保護房に収容されたりすることもあった。
控訴するかどうかについて、萩野被告は判決後、落ち着いた様子で、「自分なりに考えたい」と語ったという。
萩野被告の両親は昨年12月、宇治市の自宅を売却し、遺族への慰謝料として1000万円を供託した。しかし、紗也乃さんの両親からは受け取りを拒否されている。
はじめに断わっておくが、僕は死刑廃止論者ではない。本村洋氏の 「もし犯人が死刑にならずに刑務所から出てくれば、私が自分の手で殺す」 という復讐論はもっとであると思うし、今回の事件の被害者である、堀本紗也乃さん(当時12歳)の父恒秀さんの気持ちは、察するに余りある。しかしである。何故マスコミ各社は、彼らの復讐心を “ 正義 ” とし、犯人を殺したいがための彼らの活動を、あたかも美談であるかのように報道するのであろうか。
もう1つ、ここで断わっておくが 「 厳罰化は犯罪を抑止する 」 という考えは都市伝説であり迷信である。厳罰化が犯罪発生率を抑制した、という事実があるだろうか? 少年犯罪においては、むしろ厳罰化は逆効果という研究結果があるほどだ。厳罰化が犯罪を抑える、という客観的証拠が無い以上、厳罰化の支持根拠とされているのは 「非常に感覚的、感情的な思い入れ 」 と言う他ない。
冷静に考えてほしい。そもそも 「 厳罰化されたから犯罪はやめよう 」 と考えられるような人間が、罪を犯すだろうか? 犯罪を犯すような者なら 「 厳罰化されたから、バレないように注意しなきゃ 」 と考えるのが自然だろう。「 厳罰化されたから、もう俺の人生もお終いだ。これなら、1人殺しても2人殺しても同じだ! 」 と、むしろ厳罰化が犯罪の凶悪化を招く可能性の方が、犯罪抑止効果よりもずっと高いように思われる。
ついでにもう1つ断わっておくが、厳罰化の根拠に 「 割れ窓理論 」 を挙げる人がいるかも知れない。しかし、ルドルフ・ジュリアーニ氏がニューヨーク市長時代に行ったことは、警察官の大量増員による 「 取締りの強化 」 であって 「 罰則の強化 」 ではないことは明らかである。
マスコミ各社、特にテレビによるお涙ちょうだい的な 「 犯人を死刑にしたくて奮闘する犯罪被害者 」 の報道が、日本社会に貢献する事は全く無いのである。どんなに美談めかして “ 社会的正義 ” を気取ったところで、そんな正義はどこにもない。あるのは 『 「 復讐したい、犯人を殺してやりたい 」 という犯罪被害者・遺族の思いをネタに、一種の “ 美談 ” をでっちあげ、日本全体に 「 殺せ!殺せ! 」の大合唱を発生させて、それを飯のタネとしている 』 というグロテスクさだけだ。
さらに困った事は、マスコミ各社の報道に洗脳されて 「 犯罪者を殺す事が正義だ!死刑に反対する者は人間じゃない! 」 と本気で思ってしまっている日本人が、一人や二人ではないことである。特徴的なのが、山口県光市の母子殺人事件のケースだ。見よ、グーグルの 「 本村洋 」 検索結果を。この絶賛の数々を。ハッキリと「本村洋さんは現代のヒーロー」 と言い切っているサイトすらある。
もう一度繰り返す。「 復讐心 」 はいい。しかし、自らの 「 犯人を殺したい 」 という個人的な怨恨を、あたかも社会正義のように偽装しするとはどういう了見なのか。本村洋個人の復讐心を満たすことが、日本社会にとってプラスとなると、彼は心の底から思っているのだろうか。本村洋氏は 「 死刑制度は武士道に通じた崇高な考え方で、日本の文化に合致している 」 という主旨の、自分勝手な論理を展開した事もあるそうだから、ありえない話でもないだろう。これは小泉純一郎氏にも通じる、危険なナルシズムである。
そして、それを美談めかして垂れ流すマスコミと、真に受け洗脳されてしまっている国民の存在も大問題だ。日本はいつから 「 恨(ハン)の文化 」 の国になってしまったのだ!? これが “ 韓流ブーム ” というものなのだろうか。
また、本村洋氏や、今回の事件の遺族である堀本恒秀さんの姿勢を支持し 「 容疑者は死刑になって当然 」 と考えている人たちは、インチキな理由で始まったイラク戦争において一貫してアメリカを支持し、あまつさえ、アメリカ軍に対する支援を2年延長しようとまでしている日本の国民に対する、イラクの民による “ 復讐 ” 自爆テロも、認めるつもりなのだろうか。まさか 「 自分たちが復讐するのはOKだが、復讐されるのはNG 」 という、卑怯者丸出しの態度はとらない信じたいが、いずれにしても、復讐とは、必然的に暴力の連鎖をもたらすものであり、日々の安寧な生活を脅かすものなのである。故に、復讐心は煽るべきものではなく、コントロールしようとすべきものなのだ。
しかしなぜ、こういった野蛮でグロテスクな報道が、不自然に繰り返されるのだろう。郵政 “ 米営化 ” の隠蔽は言うに及ばず、ついこの間も、ゴールドマン・サックスが不二家株を空売りするのとタイミングを合わせて、12年前の食中毒事件を掘り起こしてまで不二家を叩いたマスコミ連中のことだ。今回の 「 殺せ!殺せ! 」 報道によっても、利益を得る者が居るのではないか、という僕の推測は、そう突飛な物でもないだろう。
「 容疑者を殺せ! 」 という報道で利益を得る者として先ず思い当たるのが、警察である。強姦容疑で服役を終えた富山県の男性の一件で火がついた感のある冤罪追求報道は、例によってすぐに下火になったものの、鹿児島県議選における公職選挙法違反の罪に問われた12人の無罪が確定するなど、冤罪は、思った以上に多く発生している。警察・検察と言えども人間なので、間違いが発生するのはむしろ自然なことであり、ある程度は仕方がないことだと思うが、日本の刑事裁判おける有罪率99.9%の数字は明らかに異常だ。宗男ハウス事件や “ 手鏡 ” 植草一秀教授の事件のような国策捜査についてはここでは触れないが、「 起訴されたらほぼ確実に有罪 」 という現状は、刑事裁判が “ はじめに有罪ありき ” で、真実を明らかにする、という機能を果たしていないとしか考えられない。
因みに、日本の “ 宗主国 ” アメリカではもっと恐るべきことになっているようだ。なんと、死刑囚ら188人が、DNA鑑定で続々、無実を証明されたそうである。リンク先の記事によると
自由を勝ち取った人たちは平均して約12年を刑務所で過ごしていた。というから恐ろしい。また
あいまいな目撃証言、真実でない自白が冤罪の主な原因という所も、日本と共通している。
DNA鑑定その他で無罪が判明すれば良いが、その前に死刑が執行されてしまえば “ 死人に口なし ” である。死刑執行後、無罪が判明した例も無いわけではないが、容疑者本人が死んでしまえば、冤罪が証明されるのはかなり難しくなるし、モチベーションも低下するだろう。死刑の執行が増えれば増えるほど、冤罪が証明される可能性も低くなるのは想像に難くない。やってもない罪まで一緒に押し付けられる、部分冤罪も増えるだろう。しかし、それによって統計上の検挙率は上がり、警察・検察も面子が立つ、というわけだ。
日本の刑事裁判についてだが、現在、国民の大半が嫌がっているにも関わらず、一般国民を無理やり 「 裁判員 」 として凶悪犯罪の刑事裁判に参加させる 「 裁判員制度 」 なる制度の準備が、2009年(平成21年)5月の開始に向け、着々と進んでいる。裁判員制度については、以前 「 〔裁判員制度〕は冤罪量産装置? 」 に取り上げたのでここでは詳しく書かないが、マスコミが今のような 「 殺せ!殺せ! 」 報道を続けるなら、死刑を下さざるを得ない “ 空気 ” が形成される事は明らかだ。
恐らく、マスコミが作り上げたシナリオに反して死刑にならなかった場合、マスコミに洗脳された 「 犯罪者を殺す事が正義だ!死刑に反対する者は人間じゃない! 」 と本気で思ってしまっている人々から、裁判に対する多数の非難が寄せられるだろう。加藤紘一氏の実家への放火事件という言論封殺行為がさして大きな問題とはならず、むしろ賞賛すらされている物騒なご時世だ。たまたま抽選で選ばれてしまった裁判員に対するテロが起こっても不思議ではない。まあ、住基ネットに違憲判断を下した三日後に “ 自殺 ” した、竹中省吾裁判官の一件のようなことは、そうそうは起こらないだろうが…。
因みに今、国会では<共謀罪>という恐ろしい法律の審議も進んでいる。当初より対象が狭まったとは言え、密告1つで罪をでっち上げられるという最悪のポイントはそのままであり、選挙後の国会における動向には注意せざるを得ない。万が一、<共謀罪>が、公安警察OBですら “ 治安維持法みたいになる ” と太鼓判を押すような内容のまま成立したら、死刑執行による “ 死人に口なし ” という事例も増え、しかも逆に治安は悪化し、日本は暗黒社会化するだろう。
「 容疑者を殺せ! 」 という報道で利益を得る者としては、他に 「 日本の政治家・エスタブリッシュメント層 」 が考えられる。現在日本では “ 国際金融資本とその手先どもによる、国際金融資本とその手先どものための好景気 ” の陰で深刻な “ 中産階級の没落、貧困層化 ” が起こっている。( 余談になるが、格差が存在することは当たり前であり、そういう意味では “格差社会” という言葉はマヤカシのレッテルである。“ 中産階級の没落、貧困層化。そして、機会の不平等による貧困の拡大再生産 ” が実体であり、マスコミを通じた印象操作に騙されてはいけない。 )
一刻も早く解決しなければならない “ 格差 ” の1つに、医療制度の崩壊がある。当ブログでも、以前より 「 【11人死亡】健康保険証の取り上げ、30万件を超す。 」 や 「 休日・夜間の救急医療体制、崩壊へ 」 といったエントリーで警鐘を鳴らしてきたが、今日も 「 ICUの医師が集団離職・国立循環器病センター 医療批判では解決しない過酷な現実 」 という記事が報道されるなど、状況は悪化の一途をたどっているようだ。
しかし、選挙の争点化を嫌う勢力があるのか知らないが、マスコミ、特にテレビでは、医療崩壊の報道はほとんどなされない。人々の命に関わる事柄であることを考えると、これは不自然と言わざるを得ない。
冷静に考えれば、北朝鮮のことよりも、医療システムの崩壊や “ 派遣奴隷 ” をはじめとするワーキング・プア ( 勤労貧困層。フルタイムで働いても、生活保護以下の水準の収入しか得られない層 )といった “ 自分たちの足元の問題 ” の方が切実であることは容易にわかる。しかし、マスコミ各社の 「 殺せ!殺せ! 」 報道によって野蛮な感情を煽りたてられた国民大衆は、本当の問題点に気付くことは無く、偽りの “ 怒りの矛先 ” をあてがわれてギャーギャー叫んでるだけ、という分けだ。「 分割して統治せよ 」 「 (大衆を)互いに争わせることで目を塞げば良い (by アドルフ・ヒットラー) 」 とはよく言ったもので 「 ハケンの品格 」 のスポンサーや、それに出資しているような連中にとっては、笑いが止まらないだろう。
毎日新聞の調査では 「 あるある大事典2 」 の捏造発覚によりテレビへの信頼度が下がった人は、実に66%にも上るらしい。これが契機となって、テレビ報道を鵜呑みにしない人が一人でも多く増えることを僕は望んでいる。
※関連エントリー
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※おまけ
- 【映画】 ダンスの次は痴漢えん罪 周防正行監督作品 「それでもボクはやってない」 〔MSN エンターテイメント〕
今日のBGM♪ Simon & Garfunkel Sound of Silence
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