
内刃・外刃セットは丸々無駄になってしまったが、まだ5つも残っている洗浄液カートリッジくらいは、何とか利用したい。ということで、さっそく電気屋に行って、ブラウンの新しいのを買ってきた。最上位モデルではないが、それでも、自動洗浄機つきで2万円弱。
つい先日も、愛車のパワーウインドウが壊れ、レギュレーター交換で3万円もかかったばかり。飲み会などが続くこの時期、更なる出費は痛い。痛いが、神聖なる “男の毎朝の儀式” のためである。ランニングコストも高くつくが、ブラウンの自動洗浄機つきにこだわってみた。やはり贅沢は、日々使うものにするのがいい。(という考えの下、社会人1年目に購入した高級雨傘は、使用2回目であっけなく盗まれた)

この750、さっそく充電し、先ほど使ってみた。以前のマシンも素晴らしい剃り味だったが、今回のは上下2つの網刃が独立して動くなど、剃り味は更に進化している。さすがはブラウン、と恐れ入ったが、一方、質感が安っぽくなったような気もする。
まず、充電中の青ランプがなんか安っぽい。しかしこれは、私の買った 750 cc-3 がシルバーを基調としたデザインのせいかもしれない。黒が基調だったら格好よかったのかも。
次に気になったのが、替え刃を交換する際の着脱感。なんかプラスティックがカチャカチャいう。こんなことは、前に使っていたマシンではなかった。恐らく、形状変更でストッパーが片側だけになったからだろう。刃をセットしてしまえば、特にぐらつくと言うこともないが、手ごたえは確実に安っぽくなった。

もう一点。これは不便になった点だが、くび振り機能をOffにしヘッドを固定するスイッチが、ヘッド側面に移動したのが使いづらい。スライドするスイッチの動きそのものも余り良くないが、そもそもこれでは、髭をそっている最中に、シェーバーを持っている手だけで操作できないではないか。
前のモデルでは 「電源オフ・くび振り・固定・キワゾリ刃」 の切り替えが、本体中央部のスイッチをスライドさせることで容易にできた。誤操作を防ぐためのストッパーボタンが中央についており、これを親指で押している間だけ、その押しボタンごと上下にスライドするのである。
今回のは強弱3段階切り替え機能などもついたため、1つのスライドスイッチで全機能を扱うのはナンセンスなのだろう。しかし、くせ髭をやっつける時など、リアルタイムに 「固定・くび振り」 を切り替えて使っていた私にとって、この操作感の変更は大きなマイナスポイントである。
なお、750の 「青く光る電源ボタン」 の押し心地は文句なく安っぽい。機能性に加え、男の儀式の雰囲気作りの意味も込めてブラウンを選んだ私にとって、こういった質感の悪さは大ガッカリポイントだ。髭の剃り味そのものは、素晴らしいのだけれど。

そう、この Braun 7526 を初めて手に取ったとき、私はまだ高校生だった。大学受験を直前に控えた1月。不器用でT字カミソリの使い方が危なっかしいため、ずっと電気シェイバーを使っていたのだが、よくカミソリ負けして肌がヒリヒリ。そんな私を見かねて、「大学合格の前祝」 と父が選んでくれたのが7526だった。かれこれもう、10年近くも前になる。
無事大学に進学し、7526と共に仙台暮らしが始まったのだが、最初の頃は、すぐに網刃(外刃)が欠けてしまうのに参った。最初の年だけで、何度外刃を替えただろう。洗浄液カートリッジが、説明書の記述に反して2ヶ月は持ったのは有り難かったが、網刃交換のコストには本当にビビッた。替え刃のコストで、もう一台買えてしまう! 何年か経って網刃のデザインが変わるまで、「今日は欠けてないかな?」 と神経質にチェックする日々が続く。
しかし、剃り味は最高だった。それまで使っていた国産のシェイバーとは比較にならぬほどマイルドな “しっとりとした” 仕上がり。時間そのものも短くて済み、それでいて、国産のシェイバーよりずっと深く剃れる。「くび振りヘッド」 はTVCMの通りに活躍。顎の下、顎と首の境目、下唇の下といった微妙なところに生えた髭を事も無げに剃り取る。今までは毛抜きで抜いていた、細くひょろんとした髭や皮膚に横たわるように横向きに生えた髭といった癖髭も、2枚刃の間にある癖髭トリマーがしっかりキャッチしたのには驚いた。
そして、洗浄液カートリッジという高い代償を強いる自動洗浄機。これの素晴らしさは少し経ってから知ることになる。
サークルの合宿になどに持っていって、先輩らから 「お前、いいの使ってるな」 なんて言われて内心得意になって使っていたら、切れ味がどんどん落ちてくる。毎回毎回、付属のブラシで掃除していたにも関わらず、3日くらいすると、もう例の国産シェイバー並になって、軽くカミソリ負けまでしてしまった。そう、7526のマイルドな仕上がりは、純正洗浄液を用いた自動洗浄による、刃の切れ味のキープによってもたらされていたのである。
なぜ私が、付属の自動洗浄機が壊れただけで、本体は完全に生きているにも関わらず、7526から新品に乗り換えたか、もうお分かりだろう。自動洗浄こそ、7526の肝だと考えているからである。そもそも、自動洗浄の便利さに慣れきってしまっている、ということもあるが。
今にして思えば、7526は、私が始めて手に入れた 「大人の男のギア」 だったのかも知れない。その後、デュポンのライターを手に入れ、革靴を靴墨で磨き、セミウィンザーノットとウィンザーノット、プレーンノットを使い分けられるようになった。スーツはいつしか9着になり、そのうち1着は既に駄目にした。PCもシンセも愛車も手に入れ、酒と煙草と女を覚え、挙句の果てにマネーゲームにまで手を出すようになってしまったが、しかしどこか、オッサン臭い外見とは裏腹に、まだまだ大人になりきれない自分がいる。
そんな自分に、毎日 「一人前の男になれ」 「大人の男の自覚を持て」 と訴えかけてくれていたのが、7526だった。7526で髭を剃っている間だけは、どんなに忙しい朝でも、ごくごく短い時間とはいえ、神妙な心持ちで自分と向きあえた。“男の毎朝の儀式” の “神聖さ” を、私は7526と共に学んだ。残念ながら、小学生時代からポツポツと使い始めていた幾つかの国産シェーバーと、ではなかった。
「7000シリーズは名機だったんです!」 今日、商品説明をしてくれた家電量販店のお姉さんは言い切った。「多くのお客さんが、長く使ってるって仰ってます。お客さんも、もう何年も、使われてきたんでしょう?」
名機 Braun 7526 よ、長い間ありがとう。そして、さようなら。
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